第78章

「――よくも俺を投げ飛ばしたな!」

渡辺夏央の怒号が、クラブの爆音を食い破る。

床に爪を立てて惨めに起き上がった彼の髪からは酒がだらだら落ち、高級そうなスーツはぐしゃぐしゃ、埃と酒染みで見る影もない。

血走った目の奥に煮えたぎる怒り。獲物を前にした猛獣みたいだった。

いちばん近くにいた新田朱音は、その「食い殺す」目に射抜かれてびくりと震え、手足が凍りつく。

日向雫は迷わず朱音の腕を引き、背中へ回す。自分は半歩、前へ。

朱音は二拍遅れて、雫の小さな腹に視線が落ちた。――この男なら、何をしでかすかわからない。

歯を食いしばり、今度は朱音が勢いよく踏み出して、雫を押し返すように背中へ...

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