第98章

日向雫の動きが、ふっと止まった。反射的に息を呑む。

男の声は苛立ちを含んだ下品な調子で、壁越しに刺さってくる。

「お前、まだ俺のこと好きなんだろ!」

「こんだけ年経っても忘れてねえんだよな?」

「俺がやったのなんて、男なら誰でも一回はやるようなミスだろ!」

「謝ったじゃねえか。それなのに許しもしねえで、徹底的に潰して、俺の生きる道まで断って……クソみてえな生活をどんだけ続けさせる気だよ……!」

「でもまあ、いい」男の声が急にねっとりと歪む。「会いたかったんだろ? 今日は俺の手の中だ。望みどおり、可愛がってやるよ!」

――バタン。

扉を閉め、鍵を掛ける音。

続いて、聞き覚えの...

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