第6章

午前二時。小百合のキッチンには、もう私一人しかいなかった。

直人の言葉が、まだ頭の中でこだましている。「去年のクリスマス、研究室で一目惚れしたんだ」。小百合が息を呑む音、固く握りしめられた隆二の拳、そして彼が去る前に私の肩を叩いた、あのぎこちない手つき。

私はスープをもっと強くかき混ぜた。銀のスプーンが鍋に当たって、カチャンと音を立てる。去年のクリスマスは、私が隆二に告白する予定だった日だ。小百合は知っていた。私たちは全部、計画を立てていたのに。それなのに、結局私が目にしたのは、オフィスビルの外であの金髪のアシスタントとキスをしている彼の姿だった。

だから私は直人からの告白に頷...

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