第3章

受賞後の一週間、私のスケジュールはぎっしりと埋まっていた。

新作脚本のオーディション、ラジオ番組の収録、ファンミーティング——佐藤理沙は私が息つく暇もないほど仕事を詰め込んできた。

「ミサエ、いい話を持ってきたわよ」

この日の午後、佐藤理沙がレコーディングスタジオのドアを開け、火のついていない煙草を咥えながら、興奮に目を輝かせて言った。

私は収録を終えたばかりの台本を整理しながら、彼女に視線を上げる。

「どんな話?」

「『声優本色』から審査員のオファーよ」

彼女は言った。

「声優界のエース級競技番組で、視聴率もずっと高いわ」

私は台本を置き、少し躊躇した。

「審査員? 賞を獲ったばかりなのに、審査員なんて早すぎない?」

「声優大賞を獲ったばかりだからこそ、絶好のタイミングなのよ」

佐藤理沙は眼鏡を外し、レンズを拭きながら言った。

「これは業界でのあなたの地位を認めるってこと。それに、審査員には橘史明もいるわ」

橘史明の名前を聞いて、私の心臓が微かに速くなった。授賞式の日以来、私たちは一度も会っていない。

「わかったわ。引き受ける」

私は頷いた。


フジテレビの収録スタジオは、想像していたよりもずっと賑やかだった。スタッフが忙しなく行き交い、参加者の声優の卵たちは緊張した面持ちで控え室で待機している。

私が審査員用の控室に入った途端、廊下の突き当たりから聞き覚えのある笑い声が聞こえてきた。

江戸未来が、上品な水色のワンピースを身にまとい、数人のスタッフに囲まれてこちらへ歩いてくる。私に気づくと、彼女の笑顔は一瞬強張ったが、すぐに自然なものに戻った。

「西村先輩、ご無沙汰しております」

彼女は軽くお辞儀をし、甘い声で言った。

「声優大賞、おめでとうございます」

「ありがとう」

私は礼儀正しく頷いた。

「ここで会うなんて思わなかったわ」

「私、生徒として番組に参加するんです」

彼女の目はきらきらと輝いていた。

「荒木君が、これはいい鍛錬の機会だって」

彼女がわざわざ「荒木君」という呼び名を強調したことに気づき、心の中に苛立ちが走ったが、表面上は微笑みを保った。

「それなら、幸運を祈るわ」

私が背を向けて立ち去ろうとすると、背後から彼女の声が聞こえた。

「そうだ、西村先輩。荒木君が先輩の『祈り』を聴いたそうなんですけど、正直あまり好きじゃないって。曲調が悲しすぎて、アニメの主題歌には合わないって言ってました」

私は足を止め、振り返って彼女のわざとらしい無邪気な表情を見つめた。

「それじゃあ、二人ともよく似てるわね」

私は平然と言った。

「彼の見る目も、あなたの演技表現力も、どっちも同じくらい最悪」

江戸未来の表情が瞬時に凍りつき、その目に怒りの色がよぎった。彼女が反撃しようとしたまさにその時、一人のスタッフが彼女に本番の準備をするよう知らせに来た。

私は角を曲がりながら、心臓が激しく脈打つのを感じた。さっきの会話はあまりに衝動的で、普段の私らしくない。

深呼吸をして気持ちを落ち着かせていると、角の向こうに長身の影が目に入った。

橘史明が壁に寄りかかって立っていた。手には火のついていない煙草が一本あり、深淵な眼差しで私を見ている。

「あ……聞いてた?」

私は少し気まずく尋ねた。

橘史明は頷き、煙草をポケットにしまった。

「番組側が俺たちを探してる」

私たちは並んで収録スタジオに向かう。数秒の沈黙の後、橘史明が不意に言った。

「お前の元カレの見る目は、確かに相当ひどいな」

その予想外の評価に私は一瞬呆気に取られたが、すぐに堪えきれず笑い出してしまった。


収録スタジオは照明が煌々と輝き、四人の審査員が特設の高いステージに座っている。ディレクターが簡単に番組ルールを説明した後、私たち審査員に小声で言った。

「江戸未来さんは荒木エンターテイメントグループが猛プッシュしている新人ですので、審査員の皆様、どうかお手柔らかにお願いします」

他の審査員に目をやると、彼らは皆、理解したように微かに頷いていた。橘史明だけが無表情で、真っ直ぐ前を見つめている。

第一ラウンド、江戸未来は実力派の子役声優と同じ舞台で、あるアニメの一場面をアフレコした。子役声優の演技は非常に素晴らしく、声色の切り替えも自然で滑らかだ。対して江戸未来の演技はやや硬く、感情表現が不十分だった。

講評の時間になると、他の二人の審査員は「台本」通りに江戸未来の演技を褒め称え、「年齢を超えた声の表現力を持っている」とまで言った。

江戸未来は賞賛を受けると非常に謙虚に振る舞った。

「先生方のお褒めの言葉、ありがとうございます。もっと努力します」

私は、あの子役声優が俯き、拳を握りしめているのに気づいた。明らかにこの不公平な評価に悔しさを感じている。

橘史明の講評の番になると、会場は静まり返った。彼は江戸未来を数秒見つめ、そしてたった四つの言葉を口にした。

「耳障りだ。評したくない」

短く、そして直接的な評価は、鋭利な刃のように、偽りの和やかな空気を一瞬で切り裂いた。江戸未来の顔は真っ青になり、目には涙が浮かんでいる。

私はこの光景を見つめながら、胸中に複雑な思いが渦巻いていた。これが日本の声優業界の現実——時として、実力は最も重要なものではない。背後にある資本と人脈こそが、運命を決定づける鍵なのだ。

橘史明の視線が私と交わる。彼は、まるでこう言っているかのように、ごく僅かに頷いてみせた。こういう言葉は、誰かが言わなければならない、と。

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