第103章 薬を盛られる

夏目千尋が目を覚ましたとき、頭が重くて、持ち上げることすらできなかった。

鼻腔いっぱいに広がるのは、埃と鉄錆の匂い。

両手は背中で縛られ、縄が手首に食い込んでじんじん痛む。足首にもガムテープが何重にも巻かれていた。

左右へ視線を走らせる。ここはワンボックスの後部座席――つまり、自分は拉致されたのだ。

さっき電話をかけた相手は、警察に通報してくれただろうか。

前の座席にいる男たちは、まだ彼女が起きたことに気づいていないらしい。何かをひそひそ話している。

夏目千尋は息を殺し、周囲を観察した。後部の窓は全部ふさがれている。逃げようにも、逃げ道がない。

それに、身体のどこにも力が入らな...

ログインして続きを読む