第105章 神崎雅臣に気があった

車が病院の正門を曲がった頃には、夏目千尋の意識はもう大半戻っていた。

けれど、体内に残る薬の効き目だけは引かない。

熱が波のようにせり上がってくるたび、彼女は唇を噛み、爪を掌に食い込ませて、必死に平静を保った。崩れたら終わりだ。

白石深尾が車を救急外来の入口へ横付けし、エンジンを切ろうとした、その瞬間。

夏目千尋はふと窓の外へ視線を流し――瞳孔がきゅっと縮んだ。

救急棟の庇の下に、白いワンピースの女が立っている。

長い髪を肩に落とし、細い身体で、つま先立ちのままこちらを探すように覗き込んでいた。

汐見千由美。

頭の奥が、ぶわっと鳴った。

なんで、ここに……?

その疑問が浮...

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