第106章 飯でもご馳走してやろう

担架が運び出された、その瞬間。

夏目千尋はまだ全身の力が抜けたままで、ぐにゃりと柔らかかった。

看護師に支えられて横になる。目を閉じかけたとき、救急ロビーのエレベーターの方角が視界の端に入り――心臓が、ぎゅっと縮んだ。

エレベーターから出てきたのは、夏目博夫だった。

隣には岩崎明依、そして夏目峰。三人で楽しげに話しながら、これから下に散歩にでも行くような雰囲気だ。

千尋の頭が、一瞬で冴えた。

――そうだ。お父さんは、この病院に入院している。

しかも今、後ろには神崎雅臣がいる。

白石深尾もいる。

もしお父さんが顔を上げて、千尋のそばに立つ神崎雅臣を見たら……。

考えるまでも...

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