第108章 誰に対しても同じ

神崎雅臣は二階の廊下の端に立ち、階下をちらりと見下ろした。

停電だ。屋敷じゅうが闇に沈み、指先すら見えない。窓の外で稲妻がときおり空を裂き、その一瞬だけリビングの輪郭が白く浮かび上がる。

階下には、人影がひとつ。微動だにしない。

いつまでも黙っている相手に、神崎雅臣は眉をひそめた。堪え性のない声音で言う。

「……喋れ」

夏目千尋は咳払いを一つして、無理やり声を半音ほど低く落とした。わざと少しだけ甘さも混ぜる。

「……今日から来た、使用人です」

二階が、すっと静まり返った。

千尋の心臓が喉までせり上がってくる。息をするのも怖い。

二、三秒してから、ようやく神崎雅臣が口を開いた...

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