第110章 引っ越し

夏目千尋が星盛グループのビルを出た途端、スマホが鳴った。

表示された名前は、夏目博夫。

出るなり、向こうは挨拶もなくいきなり言い放つ。

「神崎雅臣には話したのか」

夏目千尋はスマホを握りしめた。こめかみが、またぴくぴくと脈打つ。

「言ったよ。最近忙しいから、時間がないって」

電話口が、二秒ほど静まる。

そして夏目博夫が、鼻で笑った。

「忙しい? どれだけ忙しくても、義父の家で飯を食う時間くらいあるだろ。俺は信じないね」

夏目千尋は黙った。

「どうせ、最初から言ってないんだろ」

夏目博夫の声が、ずしりと沈む。

「お父さん、ほんとに――」

「明日の夜だ」

最後まで言わ...

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