第111章 約束

翌朝早く、夏目千尋はキャンディーに舐められて目を覚ました。

子犬は枕元にぺたりと伏せ、濡れた鼻先で彼女の頬をぐいぐい押す。尻尾はぶんぶん、止まる気配がない。

千尋は目をこすり、大きく伸びをした。昨夜は、御英レジデンスで眠っていた日々よりずっと落ち着いて眠れた気がする。

「ほら、散歩行こ」

キャンディーにリードをつけ、裏庭のドアを押し開ける。

朝の空気には花の匂いが混じっていた。外へ出た瞬間、キャンディーは大はしゃぎで、芝生へ向かって彼女を引っ張って走り出す。

そのとき、スマホが鳴った。

画面に出た名前は、夏目博夫。

一気に気分が沈む。

「……もしもし」

『今夜、必ず神崎雅...

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