第113章 ぶつかりそうになった

翌日の午前、夏目千尋は車を走らせ、夏目家のほうへ向かった。

今日はさすがに顔だけでも出しておかないと。適当に理由をでっち上げて、やり過ごせばいい。

怒鳴られるくらいなら慣れている。どうせ、いつものことだ。

道路を流していて、交差点で信号が赤に変わった。

千尋はブレーキを踏み、退屈しのぎに窓の外へ視線を投げる。

――その瞬間、身体が固まった。

歩道沿いのタピオカミルクティー店の前で、男がひとり、女と顔を寄せて話している。

しわだらけのジャケット。ぼさぼさの髪。痩せて、ひと回り小さくなった背中。

けれど、あの顔だけは見間違えようがない。

小林英太。

千尋の手が、ぎゅっとハンド...

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