第208章 いくらでも回せる

夏目千尋が顔を上げる。視界がまだ、どこか滲んでいた。

背後から、足音が迫る。

曲がり角を飛び出してきたのは、いかにも荒っぽい雰囲気の用心棒が二人。

夏目千尋が誰かに抱きかかえられているのを見て、先頭の男が一瞬だけ固まった。が、すぐに眉を吊り上げ、神崎雅臣を指さす。

「さっさと離れろ! そいつは石川社長が目ぇ付けた女だ!」

男は神崎雅臣のことなど知らない。乱暴に手を伸ばし、夏目千尋の腕を掴もうとする。

神崎雅臣は、動かなかった。

その指先が夏目千尋に触れる寸前――。

ズボンのポケットに差し込んでいた手が抜ける。

神崎雅臣は用心棒の手首を一息に掴み、逆方向へ捻り上げた。

ぱき...

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