第44章 偶然の出会い

夏目博夫は我に返ると、顔色を沈ませた。

そのまま、立ち去ろうとする夏目千尋の進路を塞ぎ、真正面に立つ。

「お前、ここに何しに来た」

「物件を見に」夏目千尋は淡々と返した。

「物件?」夏目博夫は眉をひそめ、声を荒げる。「お前、家があるだろうが。神崎おじい様がくれた別荘はどうした? わざわざここで何を騒いでる」

夏目千尋は足を止め、彼を見上げた。

「――あれは、新居だから」

「新居がどうした。住めばいいだろう」

「神崎雅臣とは、いずれ離婚する」夏目千尋は言い切った。「あの家をもらったままっていうのは、さすがに気が引ける」

夏目博夫が一瞬言葉を失い、次いで鼻で笑う。

「離婚? ...

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