第58章 食事をご馳走する

夏目千尋は、年季の入った団地を出た。

廊下の人感センサーライトはとっくにガタが来ていて、灯ってもすぐ消える。彼女はスマホ画面の頼りない光を足元に落としながら、一段ずつ階段を下りた。

今日は朝からずっと振り回されっぱなしで、体力はとうに底をついている。

配車アプリで車を呼び、町の温泉ホテルへ直行した。

頭の中では、今日の出来事が何度も反芻されていた。

神崎雅臣には、今日だけで何度助けられたことか。山から連れ下りてもらい、そのあとも伯父を病院へ運ぶことを了承してくれた。白石深尾に手を回してくれなければ、伯父の脚はどうなっていたかわからない。

借りは返さないと。

ホテルに着くと、夏目...

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