第72章 知り合いに出くわした

翌朝、神崎雅臣はきっかり時間どおりに階段を下りた。

リビングは、がらんとしている。

キッチンでは上村さんが朝食の支度を整えていて、足音に気づくなり慌てて出迎えた。

「若様、おはようございます」

神崎雅臣はダイニングテーブルに腰を下ろし、何気なく視線を巡らせる。

並んでいる食器は一人分だけ。

彼が口を開くより早く、上村さんが先に言った。

「若奥様は、まだお休みでして」上村さんは粥を運びながら、恐る恐る付け足す。「昨夜はお戻りが遅くて……お疲れなのだと思います」

神崎雅臣は俯いて粥を口に運ぶ。反応らしい反応はない。

けれど、胸の内では腑に落ちていた。

――避けているんだな。

...

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