第77章 きつく抱きしめている

エレベーターが宙でぐらりと揺れた。次の瞬間、ゆっくりと沈みはじめる。箱の中は闇で、指先すら見えない。

夏目千尋は神崎雅臣にしがみついた。両腕で彼の腰をきつく抱え込み、指が白くなるほど力を込める。

自分の心臓だけが、ばらばらに暴れているみたいだった。

神崎雅臣は暗闇の中、手探りで操作パネルを探し当てると、指先で階数ボタンを片っ端から押していった。非常呼び出しも押したが、返事はない。

圏外だ。電話も繋がらない。

それでも――落下は止まった。もう下へは落ちていない。

神崎雅臣が、わずかに息を吐く。

それから、ふっと視線を落とした。

腕の中の女が、あまりにも強く抱きついている。

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