第78章 夏目千尋の従妹

闇の中、二人の呼吸が絡み合う。

夏目千尋は彼の首筋に顔を埋め、熱い吐息を、はっ、はっ、と肌へ落とした。

空気はむっとして熱く、息が詰まりそうだった。酸素が足りないせいなのか、それとも――別の何かなのか、自分でも分からない。

神崎雅臣の手は、彼女の腰から一度も離れない。

一秒、二秒、三秒……。

エレベーターの中の時間だけが、やけに長く、やけに苦しい。

二人とも、示し合わせたみたいに口を開かなかった。

千尋が本当に息ができなくなりそうだと思った、そのとき。

頭上から、どん、と鈍い音がした。

「中に人、いますか?」

声は昇降路の上のほうから響き、分厚い鉄壁に遮られて、くぐもって...

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