第80章 道具扱い

夏目千尋がクラフト紙の封筒を差し出したとき、夏目博夫はすでに別の書類をめくっていた。

受け取って封を切り、引き抜いて三行だけ目を走らせると、脇へ放る。そして手元の資料に視線を戻した。

礼の一言もない。

夏目千尋はベッド脇に立ったまましばらく父を見つめ、踵を返して病室を出た。

廊下の突き当たりに空き部屋がある。扉は半開きで、中のベッドは空。掛け布団はきっちり畳まれていた。

夏目千尋はその部屋に入っても灯りを点けなかった。

もう、限界だった。

足首がまだ疼く。午後から今まで一度も休めず、街の半分を行ったり来たりさせられた。

靴を脱いで空のベッドに横たわり、布団を引き寄せて肩までか...

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