第89章 遠慮しないな

午後4時半。

夏目千尋は新鮮な食材の入った大きな袋を2つ提げ、邸宅の玄関を押し開けた。

リビングはしんと静まり返っている。

彼女はまっすぐキッチンへ向かった。

買ってきたスペアリブをボウルにあけた、その背後で、コツ、コツと足音がした。

ダイニングから果物の盛り合わせを持って出てきた上村が、袖をまくっている夏目千尋と鉢合わせし、その場で固まる。

「若奥様? これはいったい……」

夏目千尋は蛇口をひねり、手についた血を洗い流しながら言った。

「ご飯、作る」

上村は果物の皿をアイランドカウンターに置き、流し台に並ぶ食材を覗き込んで目を丸くした。

「若奥様、お料理なさるんですか?...

ログインして続きを読む