第9章 出ていけ

夏目千尋は殴られて顔を横に弾かれ、口元に血が滲んだ。

薬のせいで押し返す力すら出ない。絶望のまま周囲を手探りし、身を守れるものを探す。

指先が、ローテーブルの縁に置かれたガラスの灰皿に触れた。

ぎゅっと掴む。手の甲に血管が浮く。

――が、持ち上げようとした瞬間、灰皿は中村社長にひったくられた。

「俺を殴る気か?」

夏目千尋は薬が回り切っていて、もう抵抗のしようがなかった。

中村社長の脂肪の塊みたいな身体が、彼女にのしかかる。ざらついた大きな手が、待ちきれないように服のファスナーへ伸びた。

「大人しく従えよ」

そのとき――。

休憩室の扉が、ドンッと蹴り破られる勢いで開いた。...

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