第92章 偶然の出会い

翌朝早く、夏目千尋は病院へ向かった。

夏目博夫が入っているのはVIP病室だ。

病室に着くと、彼はベッドの背を起こし、スマホをいじっていた。

自分の本当の病状を知らない。

だから妙にのんびりしていて、病室でも食べたいものを食べ、飲みたいものを飲み――まるでホテル滞在みたいな顔をしている。

千尋がドアを押して入っても、博夫はまぶたを少し上げただけだった。

「来たか」

千尋は買ってきた果物を棚に置き、余計なことは言わない。

もう、この人と口論する気力は残っていなかった。

それでも、やるべきことはやる。

どんな父親でも、父親には違いないのだから。

博夫は寝返りを打ち、当然のよう...

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