第93章 神崎雅臣に金を借りる

夏目千尋は病院のロビーを、息を切らせて飛び出した。

黒いマイバッハのドアを開けようとしていた神崎雅臣が、ふと手を止める。

「神崎社長!」

駆け寄った夏目千尋は肩で息をしながら言った。

「会社までお送りします」

少し離れた場所に停めてある自分の車を指さす。

神崎雅臣は、走って赤くなった彼女の頬を一瞥した。

「好きにしろ」

そう言ってマイバッハのドアを閉め、夏目千尋の車へ向かう。

夏目千尋は慌てて運転席に滑り込んだ。

車は滑るように本線へ合流する。

車内は、息が詰まるほど静かだった。

夏目千尋はハンドルを握り、時折ルームミラー越しに彼を窺う。

神崎雅臣はシートに深く凭れ...

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