第95章 隣の男を旦那さんと呼ぶ

夏目千尋は、相手の顔を見て思い出した。

木村美弥。

前の学園祭のとき、皆の前で指を突きつけて「腕時計を盗んだ」と決めつけてきた女だ。

結局、真相が明らかになってから謝ってはきたものの、あれは謝罪というより形だけ。悔しさも不満も隠しきれていなかった。

夏目千尋は眉をひそめる。

……まだ根に持ってるの?

視線を引っ込め、まずは座ろう、と気持ちを切り替える。

三上隼人が隣へ身をずらし、手で「こっち」と合図した。

腰を下ろそうとした、その瞬間。

向かい側の木村美弥が立ち上がり、テーブルの角を回り込んでくると、わざとらしくもない、けれど確実に嫌な力加減で肩をぶつけてきた。

足首はま...

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