第97章 1分間

夏目千尋は手の中のカードを、指が白くなるほど握りしめていた。

周囲の金持ちのボンボンたちはまだ囃し立てていて、何人かは立ち上がり、彼女のほうへ寄ってくる。

「アンナ、選べよ!」

「たった1分だろ。目ぇ閉じりゃ終わるって」

胃の奥がぐらりと波打つ。

千尋はぐるりと見回した。

この個室で、名前が出せる男は――二人だけ。

三上隼人。神崎雅臣。

視線が神崎雅臣をかすめる。

男はソファの奥に沈み、襟元を少しだけ崩したまま、金属のライターを弄んでいた。火が、ぱっと立つ。揺れる炎が照らすのは、温度の欠片もない横顔。

千尋の胸がひゅっと縮み、反射的に目を逸らす。

神崎雅臣だけは無理だ。...

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