第9章 勝者

「バニラ味?いいな、それにしよう!」

ダグラスの言葉に、俺ははっとさせられた。十年前に、エレナとの初めてのデートの時に戻ったのだ。

俺は慌てて取り繕った。「じゃあ……アイスクリスタルティーを一杯」

幸い、エレナは怪しんでいないようだった。

ダグラスがアイスの樽を抱えてエレナのそばを通り過ぎた時、エレナは無意識にそのドワーフの店主の髪を掴んだ。俺の心臓がどきりと跳ねる……。

「うわっ!奥様、何故わしの髪を掴むんですか」

「わあ!ドワーフの髪って、みんなこんなに濃くて癖っ毛なの?面白い!」

エレナの子供のような問いかけに、俺はほっと胸をなでおろした。どうやら彼女は俺...

ログインして続きを読む