第7章

 村坂教授の個人研究室で、教授はハンカチで潤んだ目元を押さえていた。

「おかえり。――私の誇りだ、瑞穂」

 翌年の晩秋、私は正式に帝国音楽学院の講義へ戻った。

 かつては露骨に距離を取り、陰で指さして笑っていた連中も、いまでは私を見る目に残っているのは畏れと憧れだけだ。世論の手のひら返しが私の潔白を証明し、常識外れの回復は、触れてはいけない『伝説』として校内に根を下ろした。

 十一月。学院が年に一度開催する最大の舞台――年度ピアノコンクールが、荘厳な帝国ホールで予定どおり幕を開けた。

 これは未来を賭けた戦いだった。優勝者には高額のスペンサー芸術奨学金、そしてワルシャワ・ショパン国...

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