第182章

その瞬間、立花柚月は西園寺蓮の手をぎゅっと握りしめた。

西園寺蓮は不審そうに顔を覗き込む。

「どうした?」

彼女が一点を凝視しているのに気づき、西園寺蓮もまた顔を上げる。

視線の先には一人の男がいた。

視線がかち合う。男は微塵も動じる様子がなく、それどころか視線を逸らそうとさえしなかった。

極めて、挑発的だ。

普段であれば、あるいは彼一人であれば、西園寺蓮は迷わず追いかけていただろう。だが今は、連れが三人いる。

彼は立花柚月の手を強く握り返した。

「行くぞ」

その一言で、立花柚月の身に纏わりついていた寒気がようやく薄らいだ。

一家四人の背中は、すぐに人波へと溶けていく。...

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