第188章

立花柚月が車のドアノブに手をかけた、その刹那だった。背後から急迫した足音が迫る。

次の瞬間、肩を荒々しく掴まれた。

「動くな!」

耳元で男のしゃがれた声が響き、同時に濡れたタオルが口元へと伸びてくる。

立花柚月は目を見開いたが、タオルが顔を覆う寸前、猛然と身を屈めた。体を捻り、ありったけの力を込めて肘を後方へ突き上げる。

これは叔父様直伝の護身術だ。教わったのはたった一手だが、今の彼女にはそれで十分だった。

「ぐっ!」

男が苦悶の声を漏らし、動きが一瞬鈍る。

その千載一遇の好機に、路地の入り口から二つの影が飛び出した。

「何をしている!」

私服姿だ...

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