第205章

病室の空気は、鉛のように重く淀んでいた。聞こえるのは、瀕死の獣が喘ぐような二人の呼吸音だけ。

園田麻衣は壁際から弾かれたように身を離した。その瞳には絶望の色が滲んでいる。

「あなた……全部思い出していたなら、どうして早く言ってくれなかったの? どうして私を騙したのよ?」

「騙した、だと?」

黒田大河は彼女を凝視した。その瞳の奥にある苦痛は、彼女のそれになんら劣らない。

「俺が君を騙した? ずっと俺を騙し続けてきたのは、君のほうじゃないか! 君は意図的に真似て、近づいて、俺の記憶の中にいる『あの人』を演じていた! この三年間、俺はずっと君の欺瞞の中で生かされていたんだぞ!」

激昂の...

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