第206章

「でも……」

西園寺蓮は安心できなかった。ブレーキホースを切断するなどという行為はあまりに悪質だ。警察からその事実を聞かされて以来、胸の奥に巣食う不安が片時も消えずにいた。

具体的な証拠がなく、犯人が見つかっていない以上、立花柚月はまだ危険な状況にあるかもしれない。

警察署に到着すると、思いがけず黒田大河の姿があった。彼の額の傷は防水仕様の透明な保護フィルムに代わっており、顔色は数日前より幾分マシになっていたが、それでも蒼白さは隠せない。

立花柚月と黒田大河の視線が一瞬交錯し、すぐに静かに逸らされた。互いに不自然なほどの平静さを保っている。

張刑事は二人を別々の部屋へ案内し、聴取を...

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