第244章

エンジンをかけながら、一条利明は妹へ淡い視線を向けた。

「私たちは兄妹だからな」

正面から答えたわけではないが、その一言が何よりの証左だった。

血の繋がった兄妹に、いつまでも引きずるような恨みなどあるはずもない。

一条絵里は小さくため息をつき、サングラスを外して胸元の襟に掛けた。

「もう二十年以上も帰っていなかったから、この街の景色もすっかり見慣れないものになってしまったわ」

見慣れないどころではない。二人の間にあった過去の出来事さえ、まるで前世の記憶のように遠のいている。利明は口に出さなかったが、最初に妹の姿を目にした瞬間、彼自身もどこか他人のような違和感を覚えていた。

それ...

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