第98章

立花柚月はメッセージを完全に無視した。送信しても、まさに梨の礫(つぶて)だ。

黒田大河の顔色はどす黒く沈み、苛立ち紛れにドアを叩いた。

『ドンドンドン』

『ドンドンドン』

部屋の中でその音を聞いていた立花柚月は、あまりのしつこさに辟易し、管理室に電話をかけた。

「一号棟一ユニット六階の居住者ですが、今朝、隣人は出かけていて留守のはずなんです。それなのに、誰かが外で執拗にドアを叩いていて、非常に迷惑しています。すぐに警備員の方を寄越していただけませんか」

「かしこまりました。少々お待ちください」

黒田大河はドア枠に寄りかかり、時折思い出したようにノックを繰り返していた。妙に忍耐強...

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