第177章

スマホがそのとき鳴った。九条裕也は画面に表示された「小野隼人」の名前を見て、無言で画面を消す。

横顔のまま、車窓にもたれて目を伏せている天城澪へ視線を移した。

顔色はまだ青白く、唇には血の気がない。精巧な人形みたいで、触れたら壊れてしまいそうだった。

九条裕也は声を落とす。

「どこか、つらいところは?」

澪は黙って首を横に振った。

車内に、短い沈黙が落ちる。裕也が手を伸ばし、額の熱を確かめようとした瞬間――澪が反射的に身を引いた。

伸ばした手が宙で止まり、澪の表情もわずかに強張る。

空気が、重く固まった。

しばらくそのまま硬直してから、九条裕也は何事もなかったように手を引っ...

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