第28章

天城澪は目の前の男を見据えた。表情は、微塵も揺れない。

「私には関係ない」

九条和也は、その冷たさに耐えきれなかった。声が自然と荒くなる。

「関係ないわけないだろ! 俺が好きなのはずっとお前だ。お前だって、俺と結婚したがってたじゃないか!」

その言葉が出た瞬間、澪の胸に浮かんだのは――皮肉だけだった。

彼女が結婚を望んでいると知りながら、彼はあらゆる手で拒み続けたくせに。

彼女が過去を手放そうと決めた今になって、またそれを持ち出す。

「それは、昔の話」

澪の声は、氷みたいに冷え切っていた。

九条和也が息を呑む。澪の瞳の奥に、かすかな嫌悪が見えた気がして、心臓がひゅっと縮む。...

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