第29章

数日が経ち、社内の空気もいくらか落ち着いてきた。

小野詩織が出社すると、ちょうど九条和也が下地吉行に詰められている場面に出くわした。

「九条社長。この案件、こちらはこれだけ投資しているのに、先方は契約違反で訴えると言ってきています。損失がどれほどになるか、理解されていますか?」

九条和也は苛立ちを隠さず言い返す。

「どこが契約違反だ。担当デザイナーを名指しで指定してくるほうが、どう考えても筋が通らないだろ!」

――東洋グループ、わざとやってるに決まってる。

天城澪のデザインじゃないと継続しないと言い張り、しかも訴訟までちらつかせる大騒ぎ。

下地吉行は眼鏡越しに鋭い視線を投げ、薄...

ログインして続きを読む