第30章

天城澪は会社の横にあるカフェへ足を運ぶと、九条和也がラフな私服姿で待っているのを見つけた。

一瞬、意識が遠のぐ。

――それは、昔の九条和也の着こなしだった。

かつて澪は夢見たことがある。

二人で白髪になるまで寄り添って、彼の服を自分が整えてやる日々を。

あたたかくて、心地よくて、穏やかで。

けれど、もう二度と叶わない。

今の澪の胸に湧いたのは、嫌悪だけだった。

「……で、何の用?」

席に着くなり、澪は単刀直入に切り込む。

九条和也は聞こえないふりをしたまま、テーブルの上を示した。

「先に座れよ。お前の好きなバニラシェイクだ」

その気遣いが、逆に澪の心を冷やした。

―...

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