第36章

小野詩織たちの顔色が、さっと青ざめた。

まさか九条裕也が、こんなタイミングで現れるなんて――。

九条裕也は天城澪の手首に残る赤い痕を見つけると、瞳の温度をさらに落とした。

「……誰がやった」

霜の刃みたいな声だった。

さっきまで威勢よく騒いでいた令嬢たちは、その場で凍りつく。指一本、動かせない。

九条裕也を怒らせたら、家が飛ぶ。

それがわかっているからだ。

小野詩織は、九条裕也に守られるように抱かれている天城澪を見て、胸の奥に黒い嫉妬を燃やした。

「九条社長、誤解です。彼女が先に私たちの物を盗んだので、私たちは――」

言い切る前に、九条裕也が低く笑った。

くすり、と。

...

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