第54章

天城澪はぎこちなく九条裕也の手を振りほどいた。

「……私、戻らないと」

今夜の祝勝会、その主役は自分だ。姿が見えない時間が長くなれば、また余計な噂が立つ。

「うん。ちょうど俺も用がある。先に出るよ」

九条裕也がこのまま会場に残らないと知って、澪は胸の奥でそっと息を吐いた。

二人は並んで控室を出る。

別れ際、九条裕也がふいに澪を引き寄せ、そのまま抱きしめた。

あまりにも自然な動きで、澪は反応が遅れる。

抵抗する間もなく――次の瞬間には、もう腕がほどけていた。

耳のあたりが熱い。澪は小さく唇を尖らせる。

「……会社の人に見られたら、どうするんですか」

それを聞いた九条裕也は...

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