第58章

「ううん、詩織。わざわざ来てもらって悪かった」

さっき自分が天城澪に言った言葉を、小野詩織がどこまで聞いていたのか――九条和也にはわからない。

小野詩織は視線を落とし、くぐもった声で言った。

「澪さんと長いこと一緒だったんでしょ。そんな簡単に割り切れないよね」

九条和也が口を開こうとした、その瞬間。

小野詩織が先に言葉を重ねる。

「和也、本社がデザインコンペをやるの、知ってる? 優勝したら、そのまま大内裏修復プロジェクトのデザイナーになれるんだって」

「大内裏修復プロジェクト?」

九条和也はぽかんとした顔になる。そんな話、誰も彼に回していない。

いま子会社では、下地吉行が完...

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