第67章

九条和也が言い返されて黙ったのを見るや、小野詩織がすかさず庇うように口を挟んだ。

「澪さん、私たち普段は本社に来られないんです。道がわからないのだって、普通でしょう」

それから、わざとらしく肩をすくめる。

「それより澪さんこそ。和也と別れたあと、別の男に乗り換えたからって、本社で偉そうにできるんじゃないですか」

来る前から、小野詩織は下調べをしていた。

天城澪が九条裕也と結婚したという話は、本社ではまだ広まっていない。

その代わり、社員の間では陰で、天城澪はコネで本社に入っただの、身体でのし上がっただの――そんな下卑た噂がずっと囁かれている。

だからこそ、詩織は声量をわざと上げ...

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