第89章

九条裕也の車だった。

天城澪の瞳が、ぱっと喜びに染まる。

車が彼女の目の前で静かに停まると、澪は迷いなくドアを開けて乗り込んだ。

車内に満ちた冷気が肌を撫で、天城澪は思わず息をつく。――生き返る。

九条裕也は視線を落とし、低い声で問う。

「この案件、修復は相当きついだろ」

天城澪は頷き、否定しなかった。

「きついのはきついです。でも、修復が成功して……また公開できる日が来たら、きっとすごく達成感があります」

そう言う澪の目は、きらきらと輝いていた。

けれど、あれほど大きな宮院の修復だ。簡単なはずがない。

一年や二年で終わる仕事ではない。

「S級案件が正式に片づいたら、私...

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