フルムーンラン

エロウェン視点

妖精郷の月が放つ銀色の光が中庭の石畳に触れた瞬間、私の中で何かが疼いた。悪い疼きじゃない。もっと……渇望に近いもの。野性的な何か。心の中で私の狼が身じろぎし、体を伸ばす。彼女の存在が、まるで通電したワイヤーのようにビリビリと響いた。

『走って』リッシーラが囁いた。『月光が呼んでる』

頭上を見上げると、巨大な月が輝いていた。人界で見たどんな月よりも大きく、満ちていて、脈動し、手招きしているかのようだ。

「ねえ、これって私だけ? それとも誰か他に、理性をかなぐり捨てて森を駆け抜けたいって思ってる人いる?」私は作戦室の休憩場所から唐突に立ち上がって尋ねた。ブラムが鼻を鳴らし、...

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