避難した

ダクソン視点

アシュリアンの住処は、俺が想像していたものとは違っていた。吸血鬼の隠れ家といえば、暗い地下聖堂や血塗られた地下牢、そこら中にマントと棺桶が転がっていて、他にはロクなものがない――そんな場所だと思っていた。

だが代わりに俺が見つけたのは、本だった。おびただしい数の、いまいましいほどの本だった。

床から天井までそびえ立つ書棚には、手書きの日誌、古代の巻物、血の跡と俺には理解できない印が記された地図がぎっしりと詰まっていた。部屋の中央には巨大な机が鎮座し、その上には羊皮紙、羽ペン、ガラスの小瓶、そして博物館にでも飾ってありそうなほど古い、黒と銀の短剣が散乱している。

「...

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