エッチが足りない
エロウェン・スカイ・ソーン視点
「色気が足りないわ」頭の中でリシラが言った。その声は皮肉といたずらっぽさに満ちていた。「そっちの、星空の下で私を孕ませてって叫んでるみたいな、赤いやつを試しなさいよ」
私は痛くなるほど強く目を回し、座席にスマートフォンを放り投げた。成人祝いのパーティーに着ていくドレスを探していたのだけれど、リシラと私の意見はまったく合わなかったのだ。
「大げさなんだから」
「そっちこそ退屈すぎるわ」彼女は言い返してきた。頭の奥で、その尻尾が勝ち誇ったように揺れるのが見える。「エル、あんたは三日後には十八歳なのよ。月の女神様が私たちのメイトを目の前に落としてくれるかもしれないってのに、ベージュのセーターを着たいっていうの? ベージュよ?」
私は声に出してふんと鼻を鳴らし、ターヤの車の助手席のサンバイザーを下ろして、そこに映る自分を睨みつけた。「ベージュじゃない。これは……クリーム色」
運転席から、ターヤ・クインがけたたましく笑った。「ちょっと、やめてよ。リシラの言う通りだって。私たちはホットな女を目指してんの。ホームスクールの司書さんじゃなくてね。メイトを引き寄せるエネルギー全開で、おやつ盛り合わせみたいに自分をアピールしなきゃ、ビッチ!」
彼女は車を急に曲げ、シルバーリッジのひび割れた駐車場に乗り入れた。そこは私たちのパックの唯一の町の中心で、忘れ去られた世界からの秘密の絵葉書のように、森の奥深くに隠されている。もし人間がこの場所に迷い込んだとしても、彼らの心はただ……そこを認識しない。そんな魔法には血と、祝福と、たくさんの狼の政治が代償として必要なのだ。
ターヤの紫色のフォルクスワーゲンのビートルが、キーッという音を立てて歪んだ駐車スペースに滑り込んだ。場所は『ルーン&スレッド』の前。マーニー・ヴェイルという名の、引退したベータが経営するブティックだ。彼女は年配で、口が達者で、月の魔法を使って、まるで夢みたいに体にぴったり合う服を作る人だった。このメイト問題に関する私の不安を忘れさせてくれるくらい、私を素敵に見せられる人がいるとすれば、それは彼女しかいなかった。
ターヤは車をパーキングに入れ、ニヤリと笑うと、ひびの入ったスマホで自撮りをした。「はい、ハウル、ビッチども!」
「待って、髪が!」
パシャ。もう遅い。彼女はそれをウルフネットに投稿した。キャプション付きで。
「この町を私たちのホットさで祝福しにきた。もし私たちを見かけても? 見なかったことにしろ」
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「うぅ……」私は呟き、車から飛び降りながらバッグを掴んだ。
ブティックのガラス窓に映る自分の姿をちらりと見る。
私の肌は月光のように青白かった。髪は長くて黒く、艶やかでまっすぐ。今は風で絡まないように三つ編みにしてある。私の目は呪いであり、お気に入りのパーツでもあった。嵐の空と秘密を思わせる、鮮やかな青色。自分の体の曲線も、まあ、好きだったかもしれない。ほとんど隠していたから、どれだけ自分がカーヴィーかなんて誰も知らなかったけれど。
一方のターヤは、まるで歩く爆竹そのものだった。身長は一六〇センチそこそこ、肉感的でグラマラスな体つき。ワイルドな赤毛のカールヘアで、破れた黒いレギンスに、グリッターで覆われたコンバットブーツ、そして『もっと強く噛んで』と書かれたクロップド丈のパーカーを着ている。彼女は混沌の化身。私の混沌。
私たちが中に足を踏み入れると、途端にセージと、糸と、魔法の匂いがした。マーニーは床まである豪華なネイビーのドレスに、銀の狼のペンダントがついたベルトを締め、私たちが入ってくると片眉を上げた。彼女の白い髪は緩い三つ編みに結われ、その鋭い眼差しは、成熟したアルファでさえもたじろがせるほどだった。
「エロウェン・ソーン。やっと来たわね。あなたのファッションセンスのなさを公に非難する投稿をするところだったわよ」
ターヤが鼻で笑った。「そそのかさないでよ。あの子、自分の服装がどれだけ退屈か、もう自分の狼と喧嘩してるんだから」
「なんですって?」私は気分を害して言った。「私にだってセンスはあります!」
「あんたにあるのはトラウマよ」頭の中でリシラが訂正した。「それとこれとは別物」
私は彼女を無視して、魔法のかかったドレスが並ぶラックに向かった。ブティックのランタンの光の下でかすかにきらめく、柔らかな生地の数々を指でなぞる。その魔法は肌の下で、微かに、そして馴染み深くハミングしていた。私の狼が満足げに身じろぎする。
マーニーが手を振ると、十数着のドレスが宙に浮かび上がった。「三着選びなさい。試着して。そのどれを着ても、自分が部屋で一番セクシーで、月に祝福されたビッチだと感じられなかったら、最初からやり直しよ」
一時間後、私たちは疲れ果てて店を出た。手には三つの買い物袋、お揃いのネックレス二つ、そして頭の中には一匹の、とても得意げな狼がいた。
「やっと分かってきたみたいね」リシラが喉を鳴らした。「私たちは逸材なのよ。そう見えるようにしなくちゃ」
隣のダイナーに向かって歩いていると、ターヤが私の肩に腕を回してきた。「お腹ぺこぺこ。今すぐミルクシェイクを口にしなかったら、誰かの子供を食べちゃいそう」
私はふっと笑い、地元のティーンのたまり場である『ホロウ・スポット』のドアを押し開けた。ブース席、フェアリーライト、そしてテーブルから数センチ浮いている魔法のメニュー。油とフライドポテトの匂いが、抱擁のように私を包み込んだ。
でも、そのとき彼らが目に入った。彼が。ダクソン・ストームクローと、そのクソみたいな親友二人組が。未来のベータであるライレンと、未来のガンマであるジェイス。……もう奥の方の席に座っていた。
彼らが顔を上げる。ダクソンの嵐色の瞳が、まるで何か不快なものでも嗅いだかのように、私を捉えた。続く不敵な笑みに、私の中の狼の毛が逆立つ。彼は背が高く、肩幅も広く、その全身が石とエゴで彫り上げられたかのようだった。壁を殴ってセットしたみたいな無造作な黒髪。黒いシャツとジーンズに身を包み、鎖骨の下からは彼のパックの紋章のタトゥーがのぞいていた。
「ごきげんよう、お嬢さん方」奴はそう言った。その見下したような笑みは、太ももをナイフで刺してやりたくなるほどムカつく。
「ゴキブリども」タヤが甘い声で返し、すれ違いざまに彼に向かって中指を立てた。
『なんで今日、あいつあんな顔してるわけ? うっざ。どのツラ下げてんのよ』と、リシラが頭の奥で唸る。
私は歯を食いしばり、歩き続けた。ダクソン・ストームクローはこのパックの跡継ぎかもしれない。でも、この物語の主人公は彼じゃない。
私なのだ。
私たちは窓際のいつものボックス席に滑り込んだ。ひび割れた赤いビニールシートが、体重でキーッと音を立てる。ダイナーにかけられた魔法のおかげで、季節に関係なく店内は完璧な暖かさに保たれており、私たちが座るとテーブルの銀色のルーン文字がかすかに脈打つように光った。
私たちが宙に浮かぶメニューに手を伸ばすより早く、お気に入りのウェイトレスが足音もなく近づいてきた。
ミナは、柔らかい金色のカールヘアと蜂蜜色の瞳を持つ、心優しいオメガの狼だ。まだ二十歳そこそこで、ものすごくシャイなのに、彼女の温かい笑顔はまるで家族のように感じさせてくれる。胸元に『噛んでみて、甘いから』と殴り書きされたクロップドTシャツを着て、エプロンにはキラキラ光る月のピンを留めている。
「やあ、みんな」彼女は少しだけ弾むようにステップを踏みながら言った。「いつもの?」
「バーガーふたつ、ポテト大盛りで」と私が言う。「それから、特大チョコシェイクふたつ。ホイップクリームとチョコソース追加で」タヤがテーブルの下でかかとをこつこつ鳴らしながら締めくくった。
ミナはくすくす笑って、私たちの注文なんて分かりきっているくせに、メモに書き留めた。「了解。すぐ持ってくるね」
彼女が去っていくと、私は背もたれに寄りかかってため息をついた。「あのシルバードレス、あんたに無理やり着させられるなんて信じられない」
タヤは眉をぴくりと動かした。「無理やり? ハニー、あのドレスはあんたのためにあるようなものよ。まるで崇拝してほしがってるみたいに、キラキラ輝いてたじゃない」
リシラが同意して遠吠えした。『そうよぉぉぉ! あんたが、あのドレスを? 道行く男たちがみんな振り返りすぎて首を痛めるわよ』
私はうめき、両手で顔を覆った。「だって、胸元が開きすぎてるんだもん。ちょっと間違った動きをしたら、ポロリしちゃいそう」
「それこそが狙いよ」タヤは恥じらいのかけらもなく言った。「エル、あんたのおっぱいは伝説級なんだから。それに、あのヒップラインはもう言うことなし。スリットだって、太ももの付け根までがっつり入ってる。このドレスでメイトが見つからなかったら、月の女神様がサボってるってことよ」
私は鼻を鳴らした。「メイトを探してるわけじゃないの。パニック発作を起こさずに、あの忌々しいセレモニーを乗り切ろうとしてるだけ」
『どっちもできるわよ』リシラがしたり顔で言った。『月夜に輝く極上のご馳走みたいな見た目でね』
タヤが身を乗り出す。彼女の緑の瞳がキラキラしていた。「それに、私の背中が丸見えで胸のそばかすまで全部見えるディープグリーンのドレス姿がいけてるなら、あんただってちょっと胸元が開いてるくらい平気でしょ」
「あんたのは最高よ」私は認め、彼女がドレスの画像を保存しているスマホを盗み見た。豊かなエメラルドグリーンが、まるで彼女に恋しているかのように体にぴったりとフィットしている。野性的な赤毛と鮮やかな緑の瞳を持つ彼女は、歩く罪そのものに見えた。
「当然でしょ」彼女は誇らしげに言った。「新しい片想いの相手を、一目見ただけで気絶させてやるんだから」
私は眉を上げた。「待って、新しい片想い? タトゥー入りの備品係のリヴァーからはもう乗り換えたの?」
「当たり前じゃない。あいつ、犬が嫌いだったのよ。犬よ、エル。よだれが多すぎるんだって。犬嫌いのくせに、どうやって狼と付き合おうってわけ?」
「……それは正論ね」
私たちが二人して吹き出したちょうどそのとき、ミナが天国そのものみたいなトレイを手に戻ってきた。ダブルチーズバーガーが山盛りになった皿がふたつ、ローズマリーソルトがかかった黄金色のフライドポテト、そしてストローが曲がってしまうほど濃厚なミルクシェイク。
「神よ……」タヤはまるで女神に祈るかのようにミナに囁いた。ミナは笑ってキッチンの方へ消えていった。
私たちはむさぼるように食べ始めた。その一瞬だけは、すべてが完璧だった。満月も、囁き声も、私の血筋や魔法、あるいは自分の一体何がおかしいのかっていう「もしも」の話もない。
あるのはただ、バーガーとポテト、そしてミルクシェイクと気分の浮き沈みの間で人生最愛の人を見つけようとしている、私のカオスな親友だけ。もちろん、ダクソン・ファッキン・ストームクローが私たちのテーブルのそばを通り過ぎて、ニヤリと笑いかけてきたのは、まさにそんなときだった。
でも、それでいい。だって、今日の私は最高にイケてた。それに、ポテトもある。
おまけに、誕生日まであと三日だっていうのに、まだあいつを刺し殺してない。
これを進歩と呼ばずして、何と呼ぶ。








































































































































