ナチョスとうわさ
エロウェン視点
昼休みになる頃には、私はもう今日という日にうんざりしきっていて、カフェテリアに新鮮な鹿肉を運んでくる配達トラックの前に身を投げ出してしまいたいくらいだった。
「前だけ見てなさい」人混みをかき分けて配膳の列に向かいながら、タヤが呟いた。「囁き声は無視するの」
「努力はしてる」私も声を潜めて言い返した。「でも、もう囁き声ですらないじゃない」
私たちが通り過ぎると、上級生の一団が座るテーブルが不自然なほど静まり返った。かと思えば、私が背を向けた途端、クスクスという笑い声と、からかうような遠吠えが上がった。
「ヴァエラに狂犬みたいに飛びかかったって聞いたわよ」「あのシャツ見た?」「きっと胸丸出しで変身するんだわ」
「まったく、素敵なお言葉だこと」トレーを掴みながら、私は吐き捨てるように言った。
「ハイスクールの狼なんて」タヤが唸る。「ホルモンと半分の脳みそしかないんだから」
私たちはセルフサービスのナチョスバーで皿を盛った。私はチーズとハラペーニョを多めに、彼女はまるで吹雪みたいにサワークリームを山盛りにして、窓際のいつものテーブルへと向かった。プライベートな空間じゃないけど、私たちの場所だった。
腰を下ろした瞬間、リシラが再びざわめくのを感じた。『奴らは私たちを弱いと思っている』彼女の唸るような声が響く。『そうじゃないってことを見せてやろう』
思わず口答えしそうになるのをこらえて、チップスを一枚口に突っ込んだ。「あなたのせいで余計にややこしくなる」皿に向かってぼそりと呟く。向かい側で、タヤが片眉を上げた。「まだ荒れてるの?」
「彼女、中でそわそわしてるの」私は言った。「血が見たくてたまらないみたい。私はナチョスが食べたい。今、二人で折り合いをつけてるところ」
「じゃあ、落ち着けって言っときな。今はランチタイムよ。あたしの目の黒いうちは、ナチョスを邪魔する奴は許さないから」その言葉に、いら立ちながらも私は微笑んだ。
タヤはトルティーヤの塔をドラマチックに一口かじった。「オッケー、それで……今日はパックのゴシップ界の伝説になったわけだけど、それとは別に、昨日の夜言ってたこと、あの箱のことなんだけど?」
私はごくりと唾を飲み込んだ。その話題に、一気に現実に引き戻される。「うん。エロンが私の部屋に持ってきたの。ケイランが私に残してくれたものだって。誕生日まで開けちゃいけないって言われてる」
タヤの目が、まるでユールの朝みたいに輝いた。「それで、魔法で封印されてるの?」
私は頷いた。「アルファの王自らが錠を強化したって」
「マジで、エル」彼女は囁いた。「それってただの形見箱じゃないよ。まるで……箱詰めのどんでん返しじゃん」
私はカフェテリアを見回した。視線はまだ私に注がれ、囁き声はハゲタカみたいに渦巻いている。
「どんでん返しなんていらないかも」私は静かに言った。「ただ、誰かを火だるまにせずに、儀式を乗り切りたいだけ」
タヤの笑みが和らいだ。「大丈夫だよ。その箱の中に何が入っていようと……お父さんがあなたに残したものが何であろうと……それはあなたのもの。ヴァエラのでも、パックのでもない。あなたのもの」
私はトレーに目を落とした。そう信じたかった。でも、心の奥底で、真実がねじれていくのを感じる。見る夢はどんどん暗くなるばかりなのだ。そして、あの箱を開けたとき……もう二度と何もかもが元には戻らないだろうという、胃がひっくり返るような、ひどい予感がしていた。
「で……」タヤはまったく恥ずかしげもなく指についたナチョチーズを舐めながら言った。「明日の夜の準備はできてる?」
私はソーダを吹き出しそうになった。「精神的に? 感情的に? 霊的に? ぜんっぜん無理」
タヤはにやりと笑った。「いいね、いいね。完全にお手上げ状態ってエネルギー。そういうの、大好き」
私はうめいて、テーブルに頭を突っ伏した。「無理だよ、タヤ。逃げたい。もう、変身して森の中にでも消え去ってしまいたい」タヤは手を伸ばしてきて、私の額を軽く弾いた。「できるけど、しないんでしょ。あんたは逃げる子じゃない。戦う子だもの」
私は顔をしかめた。「時々、逃げる方が賢いんじゃないかと思うんだけど」
「イケてるブーツとスモーキーアイでキメてるならね。そうでなきゃ? ダメ」
私が、彼女はいつも正しいのがどれだけムカつくか言ってやる前に、忌々しい葬式の鐘みたいに、昼休みの終わりを告げるベルが鳴った。「うげ、訓練の時間か」私は呟いた。
「ヘアゴム、多めに持ってきたよ。さあ、あいつらの天狗の鼻をへし折ってやろうじゃない」
五分後、あたしたちは学校の裏手にある訓練場にいた。ミネソタにしては暖かい日で、空気は土と傲慢さ――つまり、そこら中のアルファの汗の匂いがした。そういえば……。
ヴァエラとその取り巻きどもがもう来ていた。艶やかなポニーテールを揺らし、あたしの人生を台無しにする新しい方法でも見つけたかのように笑い合っている。隠そうとすらしない。
「自分が月の女神に選ばれたとでも思ってるんでしょうね」ブリエルが鼻を鳴らした。
ソリアがニヤリと笑う。「選ばれたんじゃなくて、妄想の呪いをかけられたんでしょ」
タヤは目が裏返るんじゃないかってくらい、大袈裟に目を回した。「あんたたち以外、ここにいる奴ら全員大嫌い」
「こっちも同じ気持ち」あたしは言った。
ウォーミングアップを始め、あたしは彼女たちを意識から追い出そうと――本当に、心から――努力した。だけど、コーンの列をジョギングで通り過ぎようとしたとき、足が「偶然」あたしの進路に滑り込んできた。あたしは派手に体勢を崩し、地面に叩きつけられる寸前でなんとか持ちこたえる。その直後に響いた笑い声は、聞き間違えようもなかった。
ヴァエラ。あたしの中で何かがプツリと切れた。リシラが、熱く、素早く意識の表面に浮上してきた。『あいつの顎、砕かせて』
「だめ」
『爪一撃。一振りでいい。あいつはそれに値する』
「だめ」
手が震えていた。視界の端がゆらめく。
「ごめん」あたしは息を切らしながら言って、後ずさった。
「エル……」タヤが言いかけたが、あたしはもう木々に向かって全力で走っていた。森の境界線にたどり着くと同時に、走りながら変身する。銀色の炎の波みたいに、毛皮が肌を突き破って噴き出した。骨がパキパキと痛みを伴って軋み、気づけば四つ足で駆けていた。筋肉が伸び、心臓が激しく脈打ち、風が、まるで実体を持った月光のようにあたしの毛皮を駆け抜けていく。
リシラが解放されたように咆哮を上げた。彼女は森の中を駆け抜け、木々を避け、倒木を軽々と飛び越えていく。あたしたちは逃げるために走っているんじゃない……呼吸をするために走っていた。
最悪なことを、思い出すのが遅すぎた。毛皮を染め忘れてたんだ。雪のように白い毛並みの先端にある、青と銀色の部分が太陽の光を浴びてきらめいている。クソッ。あたしは激しく息を切らしながら、急停止した。
そのとき、彼の匂いがした。ダクソン。あたしは勢いよく振り返り、彼の姿を捉えた。五十ヤードほど後ろ、森の境界線の近くで、こちらを見ている。その表情は読み取れず、あたしは内心で呻いた。マジであたしをストーキングしてんの!? なんなのよ、一体! 彼が何を考えているかなんて、確かめる気にもなれなかった。
あたしは人型に戻ると、木の根元に隠しておいた非常用のレギンスとタンクトップを引っ張り出して身に着け、走り出した。駐車場に着く頃には、体は半ば乾き、怒りは完全に頂点に達していた。トラックに飛び乗ってドアを乱暴に閉め、ギアをリバースに入れる。
だが、バックしようとしたその瞬間、彼がそこにいた。運転席側のドアに寄りかかり、筋肉質な腕を組んでいる。今日あたしが一番関わりたくない種類のトラブルそのもの、みたいな顔をして。あたしは睨みつけるのに十分なだけ、窓を下げた。「どいて」
「どこにいた?」彼は平坦な声で尋ねた。
「あたしの勝手でしょ」
「お前の狼を見た」
あたしは凍りついた。心拍数が跳ね上がる。彼が一歩近づいた。「お前が普段見せてる雑種じゃない。あれは何か別物だ。あんな毛皮は見たことがない」
あたしはごくりと唾をのんだ。「見間違いよ」
「いや、違う」
彼の声は静かだったが、その瞳は燃えていた。ダイナーで見たのと同じ揺らめき。同じ戸惑い。まるで、彼の内なる何かが、あたしを認識しているのに……その理由がわからない、というように。
「お前が何のゲームをしてるのかは知らん、ソーン」彼は言った。「だが、お前が何を隠していようと、それが滲み出てきてる」
あたしは彼の視線を真っ向から受け止めた。「だから何? アルファの親玉にでもチクる気?」
彼は薄く笑ったが、その笑みは目に届いていなかった。「まだだ」
そして彼は身を引いた。あたしはアクセルを思い切り踏み込むと、後ろで砂利が派手に飛び散った。だが、学校から猛スピードで走り去りながらも、彼の声が頭の中で響いていた。
「お前が何を隠していようと……それが滲み出てきてる」
