フェイト・ビッチ・スラップ

ダクソン視点

アルファの訓練棟は静かだった。静かすぎた。

他の連中は皆、野外で訓練に励むか、何かをぶっ壊しているかだ。だが、俺は残っていた。親父の「跡継ぎとしての役割を真剣に考えろ」なんて言葉に耳を貸したのは、これが初めてかもしれねえな。どうでもいいが。退屈で死にそうで、机に短剣を彫りつけている、ちょうどその時だった。

彼女の匂いがした。野の花。焼け付く大地に降る恵みの雨。甘いシナモンと、熱。腹の底を殴り飛ばされるような衝撃だった。俺の中の狼、タロンが、頭の中で耳をつんざくような咆哮を上げた。あまりの音量に、俺はよろめきさえした。

『番だ!』

その声は、落雷のように俺の全身を...

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