第8章

「いや! お父さん! お母さん! 助けてえぇぇっ!」

 二人の護衛に脇を抱えられ、リビングから引きずり出されていくとき、キアラはドア枠にしがみつこうとして、その指先で白い爪痕を刻んだ。父と母を必死に振り返りながら上げる悲鳴は、いまにも裂けそうなほどにかれている。

 父は寝椅子に身を預け、鼻腔に酸素チューブを挿したまま瞼を閉じている。まるで、まだ呼吸をしているだけの死体のようだった。母は扉に背を向けたまま肩を震わせていたが、決して振り返ろうとはしなかった。

 誰も、止めようとはしない。

 ロッコは自らキアラを押さえ込んで車に乗せ、自らハンドルを握ってヴィクトルの縄張りへ向かい、そして自...

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