第37章 投票

機材チームのスタッフがしゃがみ込み、ぐるりと一周チェックしてから目配せした。

「バルブが緩んでますね。たぶん、さっき機材を動かしたときに当たったんだと思います」

「ありがとう」

エヴァの声は、コンビニで店員に『袋いりません』と言うのと同じ温度だった。

機材チームが去り、監督がインカム越しに何か短く指示を飛ばす。収録、再開。

タイマーの表示が、12分30秒へ跳ねた。

エヴァは4分半、失っている。

コンロに火が入る。青い炎が、すっと立った。

エヴァはフライパンへ油を回し入れ、手首をひねって薄く伸ばす。タラを皮目から落とした瞬間――

「ジュワッ」

油の煙がふわりと立ちのぼった。...

ログインして続きを読む