第62章 くじを引き直す

「ヴィクトリアが、自分の持てるものを全部この人に着せたってこと?」

「ねえ、エヴァって何者なの……? 世界中に『格が違う』って宣言してるみたい!」

「クロエ、さっきまでオートクチュール自慢してたのに、今どんな気分? 頬、痛くない?」

クロエは取材エリアに立ち、エヴァの黒いドレスを凝視した。

知っている。ヘイズ家のアーカイブに、このドレスの記録がある。

笑みが、ぴしりと固まる。マイクを握る指に力がこもった。

丹念に用意した“圧勝”の筋書きは、この瞬間、みじめな冗談へと変わった。

エヴァが取材エリアへ歩いてくる。

クロエには目もくれず、カメラへ小さく頷き、定位置で足を止めた。

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