第86章 崩壊と退場

エヴァは泥地に落ちた赤いカードを見下ろした。

ナイフは抜かない。

――挑発だ。

脳内で判断が走る。

わざと手掛かりを残し、私のテンポを崩すつもり。

エヴァはタクティカルベスト左側の防水ジッパーを開き、指先で黒い極小カメラを挟み出した。レンズを泥地へ向ける。

「カチ」

シャッター音は、息よりも軽い。

全景。

寄り。

カードの文字のアップ。

角度を変えて三枚。必要十分。

カメラをしまい、エヴァは二歩下がる。葉の付いた枝を一本折った。

手首を返し、枝先を地面に沿わせて掃く。

足跡は枯れ葉と泥に飲まれ――最初から何もなかったみたいに消えた。

泥地は元通り。痕跡ゼロ。

...

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